2012/04/25

あいさつ:ごはん食べた?

ミャンマーでの日常のあいさつは「タミン サー ピー ビー ラー?(ごはん食べた?)」である。というと、私が書いた本に「こんにちは」は「ミンガラバー」と書いてあるとクレームを受けそうだが、一応あいさつの項目には「ごはん食べた?」も入れてある。

実際のところミャンマー人どうしで「ミンガラバー」と言い合っているところを見た覚えがない。「ミンガラバー」はいわば外国人用に作られた言葉である。だから、ミャンマー人は外国人に対しては「ミンガラバー」と言うし、外国人が「ミンガラバー」と言っても違和感がない。しかし、ミャンマー人どうしではどうもしっくりこないようだ。

ミャンマー人と親しくなってくると、「ごはん食べた?」とあいさつされるようになってくる。そこで心得ておかなければならないことがひとつある。ミャンマー人にとって「ごはん」とは「コメ」だということである。日本も昔はそうだったかもしれないが、今の日本人にとってはラーメンやサンドウィッチ、フライドチキンはれっきとした食事、「ごはん」に入れていいものである。しかし、ミャンマー人にとっては違う。これらはすべて「おやつ」であり、小腹を満たす程度、軽食としての地位しか与えられていない。確かにミャンマーの麺類は量が少なめのものが多いが、いくら何でもフライドチキンはヘビーだろう。しかし量や腹持ちの問題ではなく、要は「コメ」を食べたかどうかで「ごはん」を食べたかどうかが決まる。

「ごはん食べた?」と聞かれて、「フライドチキンを食べてきたよ」と言おうものなら、「あら、まだごはん食べてないの?」なんて返事が返ってくる。もし相手が食事中の会話なら、「食べていく?」と「ごはん」を勧められるかもしれない。私の場合、「コメ」を食べてないのに「ごはん食べたよ」と言うのも何となく心苦しいので、「フライドチキンを食べてお腹いっぱい」だとか、「お昼ごはんにサンドウィッチを食べてきたよ」とか答えている。しかしこういう返事が多いと、この人は「ごはん」を食べないのかとミャンマー人は心配になるらしい。

こういうややこしい遣り取りを考えると、「ミンガラバー」は外国人にとって、とても便利な言葉かもしれない。